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2019年02月04日 [Default]

腸と脳の連絡を介する微生物


数年前までは、腸と脳の相互作用を研究する科学者の多くは、「脳ー腸ー脳」の双方向のコミニュケションを可能にする基本構成要素のすべてを特定できたと考えていた。

 ここまで、腸が消化作用や環境を監視する様々な方法を、具体的に言えば、熱、冷たさ、痛み、張力、酸性度、含有栄養素などに関する情報がいかに検知されるのかについて見えてきた。

 私たちの腸の表面は、身体内でもっとも大規模かつ高度な感覚系と見なせるほど、多様な情報を検知できる。そこから発せられた内臓刺激は、ホルモン、免疫系のシグナル分子、そして迷走神経をはじめとする感覚神経の活動を通じて、小さな脳や大きな脳に伝えられる。

この新たな知見は、消化器系がたいてい意識の働きなしに完璧に機能する理由や、汚染された食べ物に反応する理由、あるいは美味しい料理を食べた後で満足感を覚える理由を説明する。


また、私たちは、小さな脳、すなわち腸管神経系が一種の地方自治体として機能し、緊急時には連邦政府たる脳と密接に連絡を取り合いながら、事態に対処する事を知った。さらには、私たちが情動を感じる時には、脳内の特殊な情動操作システムによって、腸という舞台で上演される芝居の筋書きが練られ、腸の収縮、血流、その時生じた情動に見合う消化液の分泌などからなる、特徴的な活動パターンが引き起こされることを学んだ。


  臨床医は、腸と脳のコミニュケーションのかく乱が、IBSなどの機能的腸障害の発症に顕著な影響を及ぼすという新たな知識を手にすることで満足した。しかし、私は早くから、同僚の精神科医や胃腸病学者の一般的な見方とは異なり、このコミニュケーションシステムの異変が、不安、抑うつ、自閉症などの、消化とは無関係な障害にも関与しているのではないかと考えていた。


 科学の世界では良くある事だが、当初の我々の自信は時期尚早だったことがやがて判明する。我々は腸と脳の間の双方向コミニュケーションを巡って多くの事実を発見したものの、マイクロバイオーター必須の構成メンバーとして含む精巧な消化管ー脳回路を介して、身体が内臓反応や内臓感覚を組織化していることが次第に明らかになってきた。逆に言えば、それまではマイクロバイオーターの必須の役割をまったく考慮せずに結果を予測したり、結論を引き出したりしていたのである。


 情動によって引き起こされる内臓反応は、ねじれや痙攣に限らず、無数の内臓刺激を引き起こす。内臓刺激は脳に送り返され、そこでそれをもとに内臓感覚が生じたり調節されたりし、また、その経験が情動的な記憶として蓄えられる。さらには、世界中の科学者が驚いたことに、内臓反応と内臓刺激の相互作用の統合に腸内微生物が大事な役目を果たしている事が、最近になってわかってきた。


 現在では、この目に見えない生命のかたまりが、ホルモン、神経伝達物質、あるいは代謝物質と呼ばれる無数の小さな化合物からなる種々のシグナルを介して、常時脳と連絡を取り合っていることが理解されるようになった。このような代謝物質は、微生物の特異な食習慣によって生成される。つまり微生物が、消化されなかった食物の残滓(ざんし)や、肝臓から消化管に分泌された胆汁酸、あるいはちょうを覆う粘膜を食べる事によって生み出されるのだ。事実マイクロバイオーターは、高度な生物科学言語・・・・今後は「微生物語」と呼ぶことにする・・・・を用いて脳と長い対話を行っている。

では、何故、腸内微生物や脳は、かくも高度なコミニュケーションシステムを必要としているのか?微生物はいかにして発達したのか?この問いに答えるには、地球が微生物に満ちた海洋によって覆われていた、太古の時代に目を向ける必要がある。腸と脳の本より抜粋

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