神農本草経(漢方薬の経典)より抜粋! |
麝香(じゃこう)味は辛で気は温p153 ・ 主として、人を傷害する悪鬼(あっき)のはたらきから避けさせ、鬼すなわち死人や、精物すなわち物の怪(け)のたたりを殺(け)してなくしてしまう作用がある。 ・これを、久しく服用していると、人に悪い影響をおよぼす邪気(じゃき)を取り除き、そのため、良く夢を見て飛び起きたり、あるいは、寝ていて悪夢にいなされるといった事がなくなる。■配合漢方薬・・・救心感応丸 氣 牛黄(ごおう)味は苦で気は平p299 ・主として、急に何物かに驚いて引っくり返る驚癇(きょうかん)の病や、悪寒と発熱を伴う寒熱病(かんねつびょう)や、発熱が異常に盛んなとき(インフルエンザやコロナんど)や、そのために精神障害をおこして、狂ったようになったり痙攣をおこしたりする病を治すことが出来る。また、人に悪い影響を与える邪気を取り除き、死人のたたりの鬼氣(きき=おにき)を遂(お)い払う作用がある。 ■配合漢方薬 ・霊黄参(れいおうさん)・救心感応丸 氣 ・律鼓心(りっこしん)・複方霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん) 羚羊角(れいようかく)味は鹹で気は寒p296 ・主として、目が明らかに見えるようにし、元気を益(ま)し、陰すなわち生殖能力を奮起し、地の流れの滞りによって生じた悪い血や、それが出血する注下の症状を除いて去り、虫を用いたまじないの毒気や、人に悪い働きをする毒気及び悪氣や、死人のたたりの鬼氣や、その他の不詳不吉な毒気を避けさせる作用がある。 また、心臓の働きや気持ちを安定させ、さらに、これを常に服用していると、エンピ、すなわち、寝ていて悪夢にうなされるといった事はなくなってくる。 鹿茸(ろくじょう)味は甘で気は温p292 ・主として、なが血がくだる漏下(ろうげ)の病や、地の流れの滞りによって生じた悪い血の病や、悪寒と発熱をともなう寒熱病や、急に何物かに驚いて引っくり返る驚癇(きょうかん)の病を治すことができる。また、元気を益し、腎臓の働きの現れである志を強くし、堅固(けんご)な歯を生じさせ、年をとっても老いさらばえることが無いようにする作用がる。・また、人に悪いはたらきをする邪気や、陰中すなわち生殖器の中に在留する留血を逐(お)い出す作用がある。 ■配合漢方薬・・・霊鹿蔘(れいろくさん)・律鼓心 人蔘(にんじん・コウジン)味は甘で気は微寒p28 主として、肝・心・脾・肺・腎の五臓の氣を補うことができる。ゆえに、精と神、すなわち、腎臓に蓄えられている精神的要素の精気と、心臓に蓄えられている精神的要素の神氣のはたらきを安らかにし、魂(こん)と魄(はく)、すなわち、肝臓に蓄えられている精神的要素の魂氣と、肺臓に蓄えられている精神的要素の魄氣の働きを定め、また、すぐにものごとに驚く精神的不安や、すぐにドキドキして胸苦しくなる心臓の動機を止め、人に悪い影響を与える邪気を除き、目が明らかに見えるようにし、心孔を開き、つまり、心臓の働きを良くし、智を益す、つまり頭の回転を良くする作用がある。これを久しく服用していると、だんだんと身の動きが軽くなって、年齢を延ばせるようになってくる。 ■配合漢方薬 ・霊黄参・複方霊黄参丸・救心感応丸 氣・律鼓心・霊鹿蔘 |
麝香配合は感応丸だけ!麝香(じゃこう)の効能 |
最近、冊子体の国語辞典なんていうものは、電子辞書やインターネットの普及で、使う人は少なくなりました。電子辞書やインターネットも同じものを載せているものもありますが、何故か紙に印刷されている方が、信頼性があるような気するのは私だけではないような気もしますが、いかがでしょうか。と言ったわけで重い『広辞苑』を紐解いてみますと、ロクジョウというのは ろく-じょう 【鹿茸】鹿の袋角。補精強壮薬とする。徒然草「−を鼻にあてて嗅ぐべからず。小さき虫ありて、鼻より入りて脳を食むといへり」なんて書いてあったりします。袋角を知っているということが前提になっています。でも、池袋は知っているけれど袋角は知らないという人のほうが多いわけです。そこで袋角を引くと次のように書いてあります。ふくろ-づの【袋角】(形が袋に似ているから)シカ科の動物の角で、毎年春に脱落後の再生したての時期のものを指す。骨の芯が裸出せず、皮膚をかぶって柔らかな状態の角。鹿茸。となっています。再生したてといってもどの位の時期を指すのか、骨の芯などという表現は角と骨が同じということになり、どうなんだろうという感想もありますが、ある程度の状況把握はできます。とは言え実際にシカの角が落ちて、また新たに角が生えてくるところをご覧になった方でないと、形が袋に似ているからといっても、紙袋?ポリ袋?きんちゃく袋では形も違いますし、いったいどんな袋を指しているのか、分かったような分からない説明ではあります。 |
ともあれ雄のシカには角があります。秋になると子孫を残すため雌を巡って角突き合わせるための角です。トナカイは雌にも角があるそうですが、一般的に角を持つのは雄ジカだけです。このシカの角というのはウシやヒツジやカモシカの角と違い毎年生え替わるというのが特徴です。春、雄ジカの角はその根元というか付け根からポロッと落ちます。二、三日すると角の落ちたところから小さなコブのようなものが生えてきます。そのコブ様のものの形と伸びるスピードがあたかもキノコのようだということからシカ(鹿)から生えるキノコ(茸)、鹿茸と呼ばれるようになったと思われます。 |
この新しく生えてきたキノコのようなものを袋角といいます。袋角の成長速度は極めて早く、ニホンジカの成獣では生え始めから2〜3ヵ月で70センチメートル位になるといわれています。この袋角の状態で切り落としてしまうのが鹿茸です。袋角としての成長が終わると、柔らかかった袋角は角化が始まり、だんだん堅くなります。 |
ともあれ袋角を見たければ夏になる前に動物園に行ってシカを観察するか、You Tubeで鹿の袋角を探してみることです。インターネットは信頼性の面で少々劣るところもありますが、それらを上回る利便性があり、百聞は一見にしかずを簡単に具現化してくれます。 |
鹿茸が角化していない袋角という大まかなご理解を頂いたところで、鹿茸の歴史的経緯について少々説明いたします。中国最古の薬物書であるである『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』に収載されていることから、後漢の時代には薬物として利用されていたことがわかります。それからもっと古い時代、秦の始皇帝以前に作られた『山海経(せんがいきょう)』という書物がありますが、ここに六畜として鹿が載っていて、食用に供されていたと記されているところをみると、鹿茸は多分悠久の昔から使われていたと考えるのが適切ではないでしょうか。秦の始皇帝以前なんていいますと、西暦では紀元前三百年以上前の話ですから、今から二千三百年以上も前のことになります。 |
我が国でも古くから利用されていたことが『日本書紀』の記載から分かります。西暦六百十一年(推古天皇十九)年、陰暦の五月五日、今の暦で言えば六月の中旬から下旬にかけて本格的な夏も間近の季節です。宇陀(うだ)の菟田野(うだの)のということですから今の奈良県で薬狩り(くすりがり)を行ったと『日本書紀(にほんしょき)』に記されています。この薬狩りの薬とは鹿茸のことだったようで、野山の薬草を採るのは後の時代のことといわれています。この他にも平安時代中期に成立した法令集である『延喜式(えんぎしき)』の巻三十七には、当時の日本各地から朝廷に納められた物品リストが「諸国進年料雑薬」として残っていて、この中に今の岐阜県に当たる美濃国から鹿茸が献上されたことが記載されています。 |
鹿茸の基原動物はシカであれば何でも良いというような書きぶりをしている文献などもありますが、『中華人民共和国薬典』には二種類のシカが規定されています。一つは梅花鹿と呼ばれるシカです。このシカは英名Sika deerが示すように日本の奈良の若草山や広島県の厳島神社のある宮島にいるシカで、日本全土に分布しています。このシカは日本だけでなくシベリア東南部ウスリー川流域から、朝鮮半島、中国、チベット高原、ベトナム、台湾など広大な地域に分布しています。もう一種類は赤鹿とか馬鹿と呼ばれる大型の鹿です。肩までの高さが75センチから1.5メートルと大きく、成熟した雄はこの上に1メートルを超える雄大な角を持っているものもいます。大型の鹿は日本には分布していないものの殆ど世界中に分布しています。このように基原動物が二種類いるため、鹿茸も二種類あることになります。梅花鹿から採った鹿茸を花鹿茸、馬鹿から採れたものを馬鹿茸といいます。効能や効果は『中華人民共和国薬典』にも相違の記載がないため、同じと考えてよいと思います。花鹿茸を高級品と見るむきもありますが、鹿茸は採取時期と部位が重要で、基原動物の相違はないと考えるのが合理的です。 |
男性の精子減少にも効果的!
さて、それでは鹿茸が何に使われてきたかを文献から探してみたいと思います。まずは現代の鹿茸に関する情報を一番オーソライズされたかたちで載せている『中華人民共和国薬典』を見ることにしましょう。【効能と主治】には「壮腎陽、益精血、強筋骨、調冲任、托痔毒。用于腎陽不足、精血亏虚、陽痿滑精、宮冷不孕、羸痩、神疲、畏寒、眩暈、耳鳴、耳聾、腰背冷痛、筋骨痿軟、崩漏帯下、阴疽不斂。」とあります。適切な日本語にするのは難しいのですが、「腎陽を壮んにして、精血を益し、インポテンツや遺精、子宮の冷えによる不妊、痩せ過ぎや虚弱体質、気力が出ない、冷え性、めまい、耳鳴り、耳が聞こえない、背中の疼痛、筋や腱の衰え、月経以外の出血やおりもの、治りにくい膿瘍」ということでしょうか。生命活動をつかさどる、東洋医学でいうところのいわゆる腎の衰えから出てくる諸々の症状に有効ということです。前述の効能は現代の薬典の説明ですが、これらは長い歴史の上に成り立ってきたものと考えられ、その淵源たる書物にはいかなる説明があるのでしょうか。『神農本草経』には「漏下・悪血・寒熱・驚癇を治し、気を益し、志を強くし、歯を生じて、老いず。」とあります。「不正出血、血が滞って瘀血などを生じて起こる病、悪寒したり、熱が出る病、小児のひきつけや肺炎などを治し、元気を益し、気力を強くし、歯を生じて、老化を防止する。」ということでしょうか。また李時珍は『本草綱目』で「精を生じ、髓を補し、血を養い、陽を益し、筋を強くし、骨を健にし、一切の虚損、耳聾、目暗、眩暈、虚痢を治す」と記しています。 |
このような魅力的な効能を持った鹿茸に注目し、鹿茸の70パーセントアルコール抽出エキスからパントクリンという製剤を作り出したのは旧ソビエトのパブレンコ博士たちです。薬理実験と並んで、臨床試験も行っていますが、その結果は以下のようなものでした。@弱った心臓血管並びに心筋に特異的に作用して、その機能を回復させる。A消化器官に対してはその機能を促進させる。B腎臓機能を促進する。C筋肉の疲労を回復させる。D精神神経緊張症、神経衰弱および感受性の強い人に対し、鎮静作用と強壮作用を示す。E精力減退、無気力症に対して性機能の回復を促進する。F腫れものや傷の肉芽形成に伴う治癒を促進するといった効果があることを報告していますが、これらの効果は古来中国で利用されてきたものとほぼ同じであることに驚きます。 |
鹿茸は、高齢者にと思われがちですが、むしろ若い人の腎虚(精力減退)に役立っています。現在の食事も活力のなないものになっているし、夜更かし、スマホ、ストレスなどの影響もあって、後天の精がお粗末で、命門の精が養われない。そういう不妊症、生理不順、冷え性には鹿茸が不可欠です。 |
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